こんにちは。
大中尚一です。
コロナウィルスの影響で社会構造が大きく変化してきました。
多くの企業が影響を受けていますが、中でも、中途半端に総合的にやっていたところは苦境に立たされています。
その原因を「オンライン対応をしていなかったから」とか「業種が古い」とかいう向きもありますが、僕はそうは思いません。
もちろんそれらも原因の1つではあると思いますが、大きな要因は「中途半端だった」からということにあると思います。
何人かの企業経営者の方と話をしてみてわかったんですが、これといった特色がなかったり固定客があまりいなくて安さで選ばれていたりと言うところはかなり苦しんでいるように聞いています。
現に、中途半端に規模が大きいところは、給付金や補助金をもらっても雀の涙にしかなりませんし、なまじ規模が大きいだけに大きな方向転換ができずにじりじりと業績を下げているところが多くなっています。
アフターコロナのこれからにおいては、生き残れるのは次の3つのどれかを備えているところだと私は考えています。
1つ目は、規模の大きなところ。
中途半端な大きさではなく業界あるいは地域などでシェアナンバーワンを誇ったり、存在感を示したりしているところですね。
2つ目は、顧客基盤が盤石で固定客・ファン顧客がいるところ。
そして3つ目が、尖ったところ。
この3つのどれかを備えているところでないと、どんどん厳しくなると思います。
いずれも、一朝一夕にできることではありません。
ただ、三つ目の「尖る」は、やろうと思えば明日からでも取り組み可能です。
ある分野で突出し、「その分野ならあなたのところ」と言われるくらいに尖れば、不況も危機も乗り越えられます。
たとえば戦国時代には、そんな尖った存在がたくさんいました。
鉄砲傭兵の雑賀衆や根来衆
「王法為本(統治者に従い、政治と秩序を助けることが仏法の道である)」と唱えながら現実の権力と競った本願寺
地理的な不利を逆手に取り、日朝両国の為政者を手玉に取った対馬の宗氏
など、数え上げればキリがないほどに尖った存在だらけだったのが日本の戦国時代。
尖った存在となり、その結果選ばれて、顧客(雇い主や信徒、貿易相手)からの信用を増していき、大きな存在となっていきました。
上記の順で言えば
3.尖る → 2.固定客・ファン顧客を創る → 1.シェアNO.1
の順が王道かと思います。
自社の強みを知り、限られた資源を有効に活用し、尖った存在になっているところは生き延び、そして逆風下でも業績を伸ばすことが可能です。
そのためには、準備しておかないといけないことが3つあります。
血で血を洗う戦国時代を生きた武将たちを例に挙げつつ
今ある資産で生き残るために準備すべき3つのことを解説します。
目次
持てる資源を有効活用して生き残るために準備すべき3つのこと
持っている資源を有効活用して生き延びるために準備するべき事は、3つあります。
①自社の資源を棚卸しする
中小零細企業・個人事業・フリーランスなどのいわゆるスモールビジネスは、少ない資源しか持っていません。
その資源を有効に活用し、尖った存在・選ばれる存在になっていくためには、まず自分自社が持っている資産が何かこれを細大もらさず把握する必要があります。
自分たちが何を持っているか。どれぐらいの兵数がいてどれぐらいの兵糧を持っていて、何日ぐらい戦えるか・どこまで遠征できるか。それも把握していない指導者が戦いに勝って生き残れるはずがありません。
まず、自社が持っている資源資産を洗いざらい棚卸しすること。それがスタートです。
②顧客の棚卸しをする
すでに事業をやっているところは顧客がいると思います。
うまくいっているところほど顧客をちゃんと区別しています(差別ではなく区別です。)
パレートの法則と言う法則を聞いたことがあるかと思います。売り上げの80%を上位の20%の顧客が占めているという、いわゆる2・8の法則ですね。割合に程度はありますが、ほとんどの場合この法則は当てはまります。
逆に言うと、売り上げの20%しか締めない80%のお客様がいると言うことです。
もちろんこの80%のお客様を切ると言う話ではありません。
しかし平等に扱うのもちょっと違うんじゃないかなと。
自社のファン・ご愛顧してくださるお客様つまり、上位20%のお客様にいかにご愛顧いただけるか、リピートしていただくか、そして紹介を生むことができるか。これが非常に大事になってきます。
上位20%顧客のご愛顧やリピートをいただいたり紹介をいただいたりすることで、営業工数も格段に削減できますし、利益率も上がります。そしてその生まれた余裕を、ご愛顧いただいているお客様にさらに還元する。この正の循環を生めれば、事業は継続的に発展成長します。
そのためには、まず顧客の棚卸しをすること。
そして上位20%のお客様はどんな方かを分析し、そこに対してマーケティングをしっかり行うことが肝要です。
③過程の視える化をする
資源を有効活用するために必要な3つ目は「過程の見える化」です。
スモールビジネスはエネルギーを無駄には使えません。
勝てるところに集中する必要があります。
ただほとんどのところでは、営業・マーケティングの工程が行き当たりばったりだったり属人的であったりして、再現性に乏しかったり、どこを改善すればいいかがわからなかったりします。
マーケティングをするにせよセールスをするにせよ、一発でうまくいくような裏技はありません。
仮説を立て、実行し、検証し、改善をしていく、いわゆるPDCAサイクルが欠かせません。
しかしマーケティングや営業の過程が見える化されていなければ検証も改善もできないので、精度・成果が上がらないと言うことになってしまいます。
販売の成果を向上させるには、販売過程の見える化は必須です。
なぜ生き残ることが難しいのか
2019年の休廃業・解散と企業倒産の合計は5万1,731件。
全企業358万9,000者の1.4%が2019年に市場から撤退・消滅したことになります(東京商工リサーチ)。
特に業歴10年未満の事業の退場は27.4%と多く、起業ブームの陰では、事業が成立せずに短いスパンで退場していった企業が多いことを伺わせます。
毎年、4万社前後の企業が市場から撤退しているわけですが、なぜこんなにも多くの企業が生き残れずにいるのか。
その最大の理由が、「販売不振」です。
考えてみれば当たり前で、売れない・顧客が増えない=キャッシュが足りないので、事業が回らなくなるのは火を見るより明らか。まずはお客様を創る・増やさなければなりません。
そこで、顧客づくりでうまくいっていないところの特徴を見ると、次の3つが共通していることがわかります。
- 広げすぎ
- 枝葉に目を向けすぎ
- いきあたりばったり
織田信長がなぜあれほど短期間で領土を拡張できたのか、そして事実上天下統一を間近にできたのか。それはまず京をつまり日本の中心を抑えてから、そこから確実に各個撃破を行っていったからです。
信長と言えば桶狭間の戦いの印象が強く、少数で多数を破る武将であると言うイメージもあるんですが、実際には敵よりも多くの兵を揃え、万全の体制を整えてから戦うことを好みました。
それができたのは、政治の中心地である京を抑え、兵農分離でいつでも軍事行動を起こせるようにし、そしてそれを支えるための経済政策を怠らなかったからです。
むやみに戦線を拡大しているイメージもありますが、決して無理をせず、勝てる体制を整えてから戦いに臨みました。武田信玄との戦いも極力避け、外交で戦闘を回避しました。
本質を抑え、じつは無理をせず合理的に戦略的に動いたことがあそこまでの勢いで成長し、天下統一の基盤を作った要因の一つです。
対照的なのが戦前の日本軍部です。
むやみに戦線を拡大し、戦いに勝つことよりも参謀本部のメンツにこだわり、希望的観測に基づいた戦略立案で日本を滅亡の縁に追いやりました。
外交的な圧力などもありやむを得ない面をありましたが、彼我の実力差を正確に測れず戦いにおよんでしまったことは、明確な失敗であったといえます。
また、信長の神輿として担がれ、後に敵対した室町幕府最後の将軍・足利義昭も、本質も見極められず、余計なことばかりをして目的を達成できない人でした。
すでに室町幕府の歴史的役割を終わっていたのは明らかでもそれが認められず、昨日まで味方してくれた者を弱らせるためにまた他の勢力を巻き込み、相対的に自分の力をまそうとしました。その結果、天下を守護するのが役割のはずの将軍が逆に戦乱を助長するという事態を招きました。
持っている資源を見極め
求められていること(顧客のニーズ)を見極め
合理的に戦略的に動けるよう手配する
生き残り、成長するには、この3点が欠かせません。
この3つの要素についてより突っ込んでお話します。
自分・自社の資産を棚卸しするために
尖って成果を出している人・企業は必殺技を持っています。
いざとなったらここに戻ってくればいい、これをいろいろ加工して勝負すればいい。そうやって自信を持って世に出せる必殺技。これを持っている人は非常に強いです。
必殺技を持つためにはどうすればいいか。これは自分の芯がわかっていなければなりません。余分なものを削りに削って出てきたもの、その自分の芯があって、それを磨くことで必殺技ができます。
では必殺技を持てていない人はどんなことをしてしまっているのか。
彼らはやたらと手を広げたり、いろんなものに手を出して付け足しをしています。
雪だるまを思い浮かべてもらえばいいんですが、雪だるまを作るのにまず芯をつくります。心がないと雪がうまくくっつかず大きな雪だるまはできません。
それと同じで、芯がないまま広げたり付け足そうとしても決して大きくなる事はありません。
中国地方に一大領域を作り上げた戦国大名・毛利元就は遺言で
「天下を目指さない(毛利家はこの上天下を望まず)」
ことを子供たちに申し付けました。
跡継ぎである孫の力量を見て、天下統一などを目指すのではなく、中国地方の覇者であるそのポジションを守ることで毛利家を存続させようとしたのだと思います。自分たちの芯をおろそかにし、力量を大きく超えたことに手を広げることですべてを失う可能性があることを見切っていたんでしょうね。
その遺訓のおかげで毛利家は、所領は減ったものの江戸時代を通じて長州藩として存続し、そして明治維新の担い手となりました。
チャレンジするのは大事ですが、世間の風潮に乗っかって背伸びするのが正しいわけではない。
まず自社が持っている資源・資産をしっかりと棚卸しして自社の現状を見極め、芯を作ったうえで、その芯を基にして着実に成長させることが大事です。
では芯を作るにはどうすればいいのか。
自分自社が保有しているものを一旦全て書き出しましょう。
持っている不動産であるとか物ももちろんそうなんですけども、これからの時代は特に無形資産(ノウハウや実績、経験など)をなるべく細大もらさず書き出しましょう。
コンサルティングをする時などはよくこれをやってもらうんですが、これによって思わぬ気づきを得たり、他社と差別化できる自社にしかないものを発見したりできます。
最初に書き出す時は非常に時間がかかったり苦痛だったりしますが、時間をとってやってみてください。
顧客の棚卸しをするために
長く続いたり、持続的に確実に成長しているところは、顧客と強い絆を築けています。
言い方を変えると、顧客から「ご愛顧」されていると言えます。
顧客が繰り返し買ってくれたり、紹介してくれたりしてくれることで、営業コストも下がり、その分利益が増し、その利益を顧客サービスや社員教育に回してよりご愛顧されるようになるといういい循環を築いていますね。
織田信長の居城・安土城の石垣を組み上げた穴太衆(あのうしゅう)は、近江(現在の滋賀)を中心に寺院の石工をしていました。それが技術を買われて安土城の石垣を施工したことで信を得、その後江戸時代初期まで、多くの城郭の石垣の施行を任されました。
「石垣といえば穴太」と言われ、各地の城郭建設時にはひっぱりだこに。
一説には、近世城郭の八割にかかわったとされますから、各地の大名にご愛顧されていたことがわかります。
まさに「石垣づくり」という尖った存在として選ばれ、顧客との絆を強めていった好例と言えます。
ご愛顧いただけるファン顧客が一定数いる・増えているのが、生き残り持続的に成長できる人・企業の特徴です。
そういうところは、自社にとっての理想の顧客がどんな顧客かを把握しています。
そしてその顧客に向けて力を注ぎます。
逆にファンがおらず、常にコストをかけて集客しているところは、新規顧客を常に追いかけています。
顧客の棚卸しをしておらず、自社にとってどんな顧客が理想的かを把握していないため、コストをかけて常に新規顧客を追いかけています。
利益率の高い、かつ無理なく持続的に成長できる体質を作るためには、ご愛顧いただける理想の顧客・ファン顧客を作る必要があります。
そのためには理想の顧客像を描くことが大事になりますが、なんの材料もないまま理想の顧客像を描くと、たいていありえないような顧客像になります。
なので、まずは既存顧客のリストアップから始めることをお勧めします。
既存顧客を棚卸しし、主に売上順(客単価順や継続率順などもあり)に順位化します。
ここで2.8の法則に従い、80%を占める20%をピックアップし、そこから共通する特徴を抜き出すことで、現時点における理想の顧客を描くことができます。
過程の視える化をするために
自社を知ってもらってから顧客化までの道のりが短い、つまり営業工数が短いと、コストは下がり、利益率が良くなります。
そういうところは、営業の過程・販売の過程が、しっかりと視える化されていて、PDCAがまわしやすくなっていて、どんどん改善され、洗練されていっています。
一方で、顧客化までの道のりが長い、つまり営業工数が多くかかっているところは、
営業や販売の過程が不透明です。なので、改善ポイントがわからず、PDCAも回すことができず、いつまでたっても営業や販促がいきあたりばったりになっています。
まずは、営業や販促をどのような手順で行っているか、図にしましょう。
大半のところは、自分たちが思っている以上に、複雑になっています。複雑であればあるほど、余分な労力がかかり、時間もかかります。効果が出ていないもの、惰性で行っているものなどは削除して、なるべくシンプルな工程にしましょう。そうすることで、改善もしやすくなり、顧客化までの時間が短くなります。
まとめ
ほとんどの企業・事業が限られた資源しか持っていない弱者です。
信長や秀吉、家康のように天下を統一できる、つまり大きな市場で大企業になれる、トップになれるのはごく限られた存在です。しかも今は、世界が競争相手になってます。そんな環境でシェア争いをするのは、弱者がとれる手ではありません。
弱者が生き残り、勝ち残るには、まずはニッチに、絞って磨いて尖りまくる必要があります。
そのためには、まずは自社の現状を知ること。
自社の強み
どんな顧客がいるのか
そして営業・販促の流れはどうなっているのか
まずこの3つはマストです。
基本的なことではありますが、できているところは驚くほど少ない。
やれば、生き残る確率は上がります。
自社の強みを知り、限られた資源を有効に活用し、尖った存在になって、アフターコロナの厳しくなる環境を生き延びていきましょう。